正しいコンプレッサーの使い方【基礎編1】

  • ミックスをするとき、コンプレッサーの正しい使い方がわからない。
  • コンプレッサーのパラメーターの意味がよくわからない。

そんな疑問をもった方のために、今回の記事ではコンプレッサーの効果的な使い方(基礎編)を書いていきます。

この記事はエンジニアの渡辺紀明が書いております。
プロフィールは以下をごらんください。

NT Mixers Engineer (渡辺紀明)

    本記事の内容

  1. コンプレッサーとは
  2. Threshold (スレッショルド・スレッシュホールド)
  3. Ratio(レシオ)
  4. Attack (アタック)
  5. Release (リリース)

コンプレッサーを使いこなせればミックスにおける自由度は格段にあがります。
みなさんもこの記事を参考にして、ミックスでコンプレッサーを使いこなしてみましょう。

1 コンプレッサーとは

コンプレッサーとは音をCompress「コンプレス」和訳すると「圧縮する」エフェクターです。

圧縮といっても簡単で大きい音を設定した値にまで小さくします。

録音したままの歌を聞くと、Aメロは小さい声でうたったけど、サビはシャウトしたなど、歌の音量差は大きくなってしまいますよね?コンプレッサーはそれを圧縮して音量差を減らします。

音楽のみならずTVのお笑いやラジオのMCのトークなどには必ずと言っていいほどコンプレッサーは使用されています。ラジオを車で聞いたりするときに、音量を下げてもある程度聞こえてきますよね?
これは全体をコンプレッションして音量を一定にしているからです。かなりの量のコンプレッションがかかっています。

テレビでも同じです。『このタレントは声が小さい」「このタレントは突然叫ぶからその時は音量を下げないといけない」 なんてことはあまりないですよね?これは適度にコンプレッションをかけて聴きやすくしているからなのです。

またコンプレッサーは迫力を出すエフェクト。と思っている方も多いと思いますが、これはざっくりとした言い方で基本的には間違っています。

上記のようにコンプレッサーは音を小さくするエフェクトですからね。これは音小さくしたぶん、Make Up Gain (メイクアップゲイン)などで圧縮しているからです。 Make Upとは「化粧」とか「作り上げる。」「彩る」という意味があるのですが、

音を小さくした分、全体のゲインをあげているー>その分迫力がまして聞こえる。ということなんですね。


Waves Renaissance Axx スレッショルドを下げるとその分メイクアップゲインが自動で働き音が大きくなる。

2 Threshold (スレッショルド・スレッシュホールド)

圧縮を開始させる音量ポイントの数値のことです。この数値を超えると設定していた分だけ圧縮がはじまります。

この数値(音量)を原音が超えると圧縮が始まります。

ピークレベルが-10dBのキックです。Thresholdを-20dBに設定すると赤線のあたりです。

3 Ratio (レシオ)

スレッショルドで線引きをした後、この線を越えた音を圧縮するとき、<span class=”maker”>音量を原音の何分の1にするか。それを決めるのがレシオ</span>です。


レシオの数字が高くなれば音がその分圧縮されます。

Avid のプロコンプレッサーを使って実践していきます。

Ratioを3:1にしてコンプレッション
Ratio 3:1
Ratioを16:1にしてコンプレッション

Ratio 16:1

ここで大事になってくるのは使っているコンプレッサーの違いです。


たとえば多くのDAWについてくるコンプレッサーは細かい数字の書き込みが可能ですが、

CLA-76などのアナログモデリング系は細かい数字はありません。


CLA-76など1176系コンプレッサーはレシオを4:1にした時と8:1にした時ではスレッショルドの位置が変わります。

8:1, 12:1, 20:1 とレシオをあげて強くコンプレッションかけようとするとスレショルドの位置があがっていき、小さい音にはコンプがかかりにくくなるのです。4:1では小さい音も含めて全体にコンプがかかる設定 20:1となってくるとスレッショルドが上がり大きなおとだけ強くコンプレッションがかかる設定。と自動でなっているわけですね。

CLA-76 大きなスタジオには必ずといっていいほどある鉄板器のシュミレーション


こうやってコンプレッサーによってはスレッショルドとレシオに独自の味付けがされており、これが使いやすさにも繋がっています。そういう意味で上記のAvid Pro コンプレッサーなんかはデジタル制御通り、指示した通り動く。という意味であるいみ使い方が難しいコンプレッサーになるというわけです。

4 Attack (アタック)

アタックとはスレッショルドで設定した値を音が超えた時点から、その音がレシオ値まで小さくなるのにかかる時間です。(コンプがかかり始めるまでの時間ではなく、スレッショルドに到達した音がレシオ通りに圧縮されるまでの時間)
単位はよくmsを用いいます。これはミリセカンドの略で、1000分の1秒です。

1000ms=1秒
1ms = 1000分の1秒

またusはマイクロセカンドの略で 1msが1000usです。Avidのコンプレッサーのようなデジタル系のコンプレッサーには登場しますね。逆にアナログのコンプレッサーはアタックを最速にしても1msが限度だったりするモデルもありますので、
個体差を知る必要があります。Avid のプロコンプレッサーの最速値は 100us(0.1ms)です。

ちなみに1秒は英語で1 Second (セカンド) そしてこれを略して 1 Sec (セック)と読んだりします。

音は発音の出だしに重要な成分を含みます。原音のアタックを残したい場合はアタックを遅め。アタックも含めて速くコンプレッションしたい場合はアタックを早めにするとよいでしょう。
いかに具体的に音がどう変わるかキックの音を使って解説します。わかりやすくするためにリリースは速めにしてあります。Avid Dyn3 Compressorは最速のアタックは10usまで速くできますので今回はDyn3 Compressorの方を使用しました。適度にメイクアップゲインをつかっています。

オリジナルのキック
オリジナルのキックの波形

スローアタックでのコンプレッション
スローアタックでの波形 アタックの部分をスルーしてリリースの部分からコンプレッサーが効き始めている

ファーストアタックでのコンプレッション。若干割れ気味
波形にするとこうなる。アタックが削れ、リリースがもち上がっている

5 Release (リリース)

リリースとは原音がスレッショルドより低くなった際にどれくらいの時間コンプレッションを維持するかを決めるパラメーターです。
シンセも鍵盤から手を離した直後、勝手に音が伸びたり、もしくはバスっと音が消えたり設定できますよね?それと一緒だと思ってください。
それならリリースはゼロでよいいじゃん?と思うかもしれませんし、実際ゼロでも問題ないこともあるのですが、
コンプレッションが急激になくなることにより、ノイズなどが発生、(音の切れ端がノイズに聞こえたり)してしまうのです。
シンセもリリースをゼロにするとブツブツノイズが出てきたりしますよね。

リリースは基本的にはこういったノイズや不自然なサウンドを防ぐために設定すると思っていただいて問題ないです。

下はファーストアタック、ファーストリリースによって歪んでしまったキックとリリースを遅くすることによって歪みを軽減したキック

歪んでしまっている
リリースを遅くすることによって歪みを回避している

リリースを長めにすると、仮にスレッショルドより低い音でも前の音によってはコンプレッションがかかることになり、常にコンプレッションがかかった状態になります。


これを低めのレシオ2:1などと組み合わせることにより、コンプレッサーがかかりっきりのサウンドをつくることができます。

オリジナル : 一音一音くっきりしている
リリースを遅くしてずっとコンプレッションがかかったサウンド。ハキハキさがなくなっているが、滑らかになっているともいえる。コンプレッションされた分メイクアップゲインを使って音量を合わせている。

この二つの違いは少ないと感じるかもしれませんが、ミックスの中では違いが出てきてます。より上級テクニックといえます。

いかがでしたでしょうか?

今回書ききれなかったパラメーターも多いので基礎編第2回をやろうと思ってます。

この記事が何かの参考になれば幸いです。

何か疑問がありましたらコメント欄に書いていただければお答えいたします。
今回もどうもありがとうございました。