正しいコンプレッサーの使い方【サイドチェイン編】

  • サイドチェインってよく聞くけど何?
  • サイドチェインは自分は必要?

そんな疑問をもった方のために、今回はコンプレッサーの効果的な使い方【サイドチェイン編】を書いていきます。

この記事はエンジニアの渡辺紀明が書いております。
私のプロフィールは以下をごらんください。

NT Mixers Engineer (渡辺紀明)

    本記事の内容

  1. サイドチェインフィルター
  2. サイドチェイン(ダッキング)

サイドチェインは大まかにした2つに分けれます。

サイドチェインフィルター

Avid Dyn3 compressor

サイドチェインフィルターを使うとは「コンプレッサーをかけたい音にEQをかけて変化させその音をトリガーにしてコンプレッションをかける」ということです。すこし難しいですかね。(笑)

例えば低音と高音が両方別々のタイミングで同じくらいの音量で鳴るトラックがあるとします。このトラックに普通にコンプをかけると、高音と低音が別々のタイミングで同じくらいの音量であれば、スレショルドに同じように到達して、同じくらいコンプがかかってしまいますよね。そういう時、本当は高音だけコンプをかけたい、もしくは低音だけコンプをかけたい。そんな時に使います。


一番よくある具体的な使い方ですが、
ドラムのミックスバス(ドラムがまとまったチャンネル)にコンプレッサーをかけたいが、
キックが大きすぎてキックにコンプレッサーが反応しすぎてしまう場合、
180hz以下にハイパスフィルターをかければ、キックには反応しづらくなります。
(コンプレッサーによってはサイドチェインフィルターはハイパスフィルターのみの場合もあります)

以下サウンドの例です。

ループでスネアが飛び出しているので、スネアがなった時にコンプをかけてまとめたい。でもキックは大きいままにしたい。といった場合を想定しています。

オリジナル
サイドチェインフィルターなしでコンプをかけた状態
250hzからローカットしたサイドチェインフィルターを使用したもの
オリジナル2
サイドチェインフィルターなしでコンプをかけた状態
250hzからローカットしたサイドチェインフィルターを使用したもの

2 サイドチェイン(ダッキング)

ダッキングとはボクシング用語で「アヒルが水面をくぐるように、頭をすばやく下げて相手の打撃を避けること」です。


上記のサイドチェインフィルターは「コンプのトリガーとしてコンプレッションされる予定の音をEQで変化させて使う」ということでしたが、このダッキングの処理ではコンプのかかり具合やタイミングをコンプをかける対象とは違うトラックの音で決めます。

これはとてもクリエイティブな方法で色々な使用方法があります。

代表的なものだと、4つうちキックをトリガーに使って、パッドやシンセ、歌などに4つ打ちのリズム感を与えるやり方です。サイドチェインを使った曲はたくさんあるのですが、筆者が好きなのはこのDisclosure- Latch feat. Sam Smithですね。特にサビでは強烈なダッキングが聞けます。

ダッキングをするにはトリガーにしたい音をAux Pre Sendをつかって出力します。
あとはそのシグナルをコンプレッサーのサイドチェイン用の信号を入れるための入力、「サイドチェイン入力」に入れます。

こちらサウンドの例です。キックをトリガーにしています。

サイドチェインなし
サイドチェインあり

ダッキングでもう一つ思いつくのはリバーブをダッキングさせるやり方です。

シンセなどをクリアに前面に出したい。でもリバーブなしだとそっけない。そんな時に使えるテクニックです。
やり方はドライ音自体をトリガーにします。ドライ音が鳴っている時はドライ、ドライ音が終わった瞬間にリバーブが浮き出てくるやり方です。

こちらサウンドの例です。

オリジナル リバーブなし。
リバーブあり。サイドチェインなし。深いリバーブがドライを覆っている
サイドチェインあり

このように、原音はドライに聞かせつつ、リバーブで原音に『尾ひれ』をつけることができます。

またリバーブではなくディレイをダッキングさせるのも効果的です。下はそのサウンドの例。ダッキングなしだとディレイがドライ音が鳴っている間に始まってしまいますが、ダッキングを使えばディレイはドライ音が鳴り終わったあと始まります。(最初の4音がドライ音です。)

サイドチェインなし。
サイドチェインあり

またリバースリバーブをつけるときも役に立ちます。リバースリバーブは原音と被らないようにしたいですからね。

下ががリバースリバーブをダッキングした例。よくEDMなどで聞けますね。リバースリバーブをちょうどドライ音が始まるタイミングでダッキングしています。(ビートは私が5分くらいで適当に打ち込んだものです。専門家じゃないのでこんなんですみません。笑)

サイドチェインなし
サイドチェインあり

音楽は音の長さが大事です。このサイドチェインダッキングでコンプレッサーで音の長さを調整できるわけですね。

いかかでしたでしょうか?このコンプレッサーの使い方サイドチェイン編がみなさんのお役に立てば幸いです!次回はコンプレッサー基礎編の続きをやっていこうと思います。