正しいコンプレッサーの使い方【基礎編2】

  • ミックスをするとき、コンプレッサーの正しい使い方がわからない。
  • コンプレッサーのパラメーターの意味がよくわからない。

そんな疑問をもった方のために、今回の記事ではコンプレッサーの効果的な使い方(基礎編2)をお送りします。

この記事はエンジニアの渡辺紀明が書いております。
私のプロフィールは以下をごらんください。

NT Mixers Engineer (渡辺紀明)

前回に続いてコンプレッサーのパラメーターの解説をしていきます。コンプレッサーの種類によってはあるものとないものがでてきますのでご了承ください。

    本記事の内容

  1. メイクアップゲインについて
  2. ニー Kneeについて
  3. ミックス (Dry-Wet)について

1 メイクアップゲイン

メイクアップゲインは出力の音量を上げるパラメーターです。

コンプレッサーはスレッショルド値を超えた音を小さくしますから、コンプレッサーをかけただけでは音量が小さくなってしまいます。

ですのでメイクアップゲインで減った分音量をあげていくわけです。

前回も書きましたがこのメイクアップゲイン効果で「コンプをかけると音圧が増す」といった認識が生まれています。

特にコンプレッサープラグインはメーカーが音がよくなったとユーザーに思われせるために過度にメイクアップゲインを上げている場合が多いです。

私としてこれは残念なことですね。

コンプレッサーはあくまで音を小さくするエフェクト。これを念頭にいれ、過度なメイクアップに惑わされないようにしましょう。

2 ニー

コンプレッサーによってはニーの機能があるかもしれません。

ニー(Knee) とは英語で ひざ の意味です。

《正しいコンプレッサーの使い方基礎編1》でも説明しましたが、コンプレッサーはスレッショルドの値を音が越えない限り作動することはないので、

スレッショルドを超えた音から突如コンプがかかることになり、ギリギリ超えない音はコンプがかからないことになります。

この状態をハードニーと呼びます。

ハードニーだとスレッショルド値を越えてコンプがかかっている音とギリギリスレッショルドに届かないコンプのかかっていない音との差が生まれることになります。

これを解消するのがソフトニーです。

ハードニー、ソフトニー、どちらがよいという事はなく、音によって使い分けたいところです。

実践的には歌など自然に聞かせたい場合はソフトニー、ドラムなどコンプ感を出したい場合はハードニーを使うとよいです。

 コンプレッサーによってはこのニーのパラメーターがないと思いますが、これはコンプレッサー個体によってそれぞれ独自のニーの値がついているからと言えるでしょう。

 アナログコンプレッサーはこのニーの違いがコンプレッサー個体の音色の違いに多く影響しています。

またソフトニーにすると指定したスレッショルドより早くコンプがかかり始めるためハードニーより若干音量が下がったように聞こえますが、真に大事なのは音色の変化ですので音量の変化に惑わされないようにするのが大事です。

3 ミックス (Dry-Wet)

これはハードウェアにはあまりないプラグインならではの機能で、コンプをかけた音(wet) と原音(dry) のバランスを調整する機能です。

 『コンプレッサーをかけすぎたけど、すこし効果を緩めたい。』といった場合、100%Wetになっているのを、Mixで少しDryを混ぜてあげても効果的です。また、レシオを下げたりニーを緩めたりなどと、他にも色々方法はあります。

私は昔はハードウェアでミックスしていた世代に当たるのですが、その時はこのDryとWetの混ぜ具合をミキシングコンソールを使ってフェイダーに上げ下げでやっていました。

 ギターのチャンネルがあるとして、その音をAux SendでAux Faderに送ってそのAux Faderにコンプレッサーをインサートして原音と混ぜていくのです。

これはレイテンシーのないアナログの世界ならではの方法ですね。

同じことをDAWでやる場合、チャンネルごとに少しでもレイテンシーの違いがあるとフェイズ干渉を起こしてしまうので注意が必要です。

ちなみにこのDryとWetと混ぜてコンプレッションする方法をパラレルコンプレッションと呼びます。またの名をニューヨークスタイルコンプレッションと言います。

 私は20代の頃アメリカの大学でレコーディングを学んだのですが、当時そう教えられましたね。中間テストにもでました(笑)懐かしい思い出です。

 昔はロサンジェルス(西海岸)では普通にダイレクトにコンプレッサーをインサートする方法が好まれ、ニューヨーク(東海岸)の方ではこうやってコンプレッションしたサウンドをDryと混ぜるやり方が好まれていたようです。

 西海岸と東海岸でそれぞれ独自のミキシングスタイルになっていたのは面白いですね。

 ちなみに日本のエンジニアさんはあまりこのパラレルコンプレッションを使用しない傾向にあるのかなと思っています。少なくとも私以外でこのパラレルコンプレッションを使用する方はいなかったです。

パラレルコンプレッションの難しいところはDryにWetを混ぜることにより、音量が上がってしまって、その音量差で惑わされてしまうということです。

パラレルコンプレッションを使う時はWetを混ぜる時、原音をすこし下げるなどして、このDryWeyのミックス音が、元の原音と同じくらいの音量になるように心がけましょう。

またWetのコンプレッションサウンドは極端なものにするとDryと混ぜる時に混ぜやすいです。あまり代わり映えのないWetサウンドだとフェイズ干渉を起こしてしまうので注意です。

以下サウンドの例です。

オリジナルのドラムス
オリジナルのドラムスをリリースを強調して過度にコンプレッションしたもの
Dry 50% Wet 50%でミックスしたもの

上はリリースを太く出したい場合、下はアタックを強調したい場合です。

 Slow Attackで過度にコンプレッションしたもの(音量注意)
Dry 80% Wet20%でミックスしたもの

今回はこの辺りで終わりにしようと思います。

いかかでしたでしょうか?次回は基礎編3を予定しております。この記事が何かの参考になりましたら幸いです!