- マルチバンドコンプレッサーが正しく使えてない気がする。
- マルチバンドコンプレッサーってなぜ必要?
そんな疑問をもった方のために、今回はコンプレッサーの効果的な使い方【マルチバンドコンプレッサー編】を書いていきます。
この記事はエンジニアの渡辺紀明が書いております。
私のプロフィールは以下をごらんください。
- マルチバンドコンプレッサーとは
- マルチバンドコンプレッサーはどんな時に使いたいか。
- 筆者が使っているマルチバンドコンプレッサープラグインの紹介
本記事の内容
マルチバンドコンプレッサーとは
バンドとはこの場合,日本語でおび(帯)を指します。直訳すると複数の帯ですね。
マルチバンドコンプレッサーとは音を複数の帯域に分離して、それぞれの帯域の音に別々の設定のコンプレッサーをかけれるエフェクターです。
例えば、キックの6kHzより上の高音はファーストアタックのコンプレッサーでアタックを抑えつつ、100hHzよりしたの低音にはアタックを遅くしたコンプで低音のアタックをつける。といったことが可能です。

マルチバンドコンプレッサーはどんな時に使いたいか
1つの楽器や歌の中で高音, 低音もしくは中域でコンプレッサーの処理を変えたい時、また一つの帯域だけコンプレッサー処理したい時など使います。コンプレッサーは音量を抑えますので、抑えた帯域をメイクアップゲインであげる。という行為とともに結果EQをするのに近いとも言えます。
ただEQだとその帯域が本当はEQしなくてもよい音量のときも曲を通してEQしてしまうのに対し、マルチバンドコンプはその帯域がスレッショルドに達しない限りコンプレッションしませんので、より精密な処理を行えます。EQのゲインの幅をオートメーションで曲を通して上下させるのに近いといえますね。
マルチバンドコンプレッサーといっても常に全部の帯域をコンプレッションさせる必要はありません。問題のある一つの帯域だけをコンプレッションさせてもオッケーです。
例えばAメロは音程が低いのでボーカルの低音が膨らんでいたとします。
ただBメロ以降は音程があがり、声も張りぎみで歌ったので低音の膨らみは気にならなくなったが、逆に声の痛い帯域が気になる。
そんな時はマルチバンドコンプレッサーで一つ目のバンドで200hzを中心にコンプレッションをかけ、二つ目のバンドで2kHzを中心にコンプレッションをかければ曲を通してフラットなボーカルに仕上げられるでしょう。
いくつかサウンドのサンプルです。(Fabfilter Pro MB使用) マルチバンドコンプを使用して帯域バランスをフラットに近づけ音抜けをよくしています。音量が減った分はメイクアップゲインであげています。人間は音量が上がれば音がよくなったように感じてしまう生き物ですので、エフェクトをかけた時は音量がオリジナルと同じくらいになるようにするのが大事です。
筆者が使っているオススメマルチバンドコンプレッサー
Fabfilter Pro MB

筆者の年齢的にマルチバンドコンプレッサーというと Waves C4なんですが、
C4からすると圧倒的な時代と技術の変化を感じるのがこの Fabfilter Pro MB
これでやれないことは無いんじゃないのか。と思わせるくらい機能が充実しています。
その分使いこなすのが難しいのが難点でしょうか。
いまミキサーを志す人はいきなりこんなものが手が届くところにあってすごいです。(笑)
ただコンプレッサーや帯域などの基礎をしっかり学ばないともろ刃の剣になってしまう可能性のある強力なプラグインですね。
Brainworx bx_dynEQ

厳密にはダイナミックEQという種類のコンプレッサーなのですが、要はマルチバンドコンプのバンド(帯)が一つのコンプレッサーです。狙った帯域を補正するのには使いやすさでいうと私的には一番です。
筆者はこれに、 「250h」とか「4khz」などとプリセットをたくさん作ってあり、問題のある帯域、暴れている帯域を手早くフラットにするのによく使います。
デビューは2009年くらいでしょうか。当時衝撃を受けてすぐに購入した思い出があります。当時あったC4などの昔からのマルチバンドコンプではここまでのコントロールはできなかったですからね。
長年仕事をしている某大手ゲーム会社のプロデューサーさんとのTD(トラックダウンの意味,ミックスを確認すること)時には、『渡辺さん。例のやつお願いします。』と言ったらこれが出てきます(笑)
帯域補正は今でもこれが一番しやすいですね。
PSP Audioware Old Timer MB

筆者が一番オススメするマルチバンドコンプレッサー。上の二つは主に補正をする目的で使うことが多いのですが、
このコンプレッサーは音をよくしたいときに積極的につかうコンプレッサーです。
使っていて楽しいコンプレッサーですね。パキッさせるというよりかは、音を滑らかにできるコンプレッサー
昔からこれのシングルバージョンである Old Timerをよく使ってきたのですが、最近まさかのマルチバンド化したことにより、より一層使う機会が増えました。こういうコンプレッサーを使いこなせるようになると、ミキシングエンジニア的なプロっぽいサウンドが出せるようになるのではないでしょうか。激しいスピード感のあるサウンドは苦手なコンプレッサーです。
以上マルチバンドコンプレッサー編いかかがでしたでしょうか。
この記事が参考になれば幸いです。